MISO JOURNAL

【MISOTIMES】厳選した国産原料と箱根山系の地下水を使用する西湘地区唯一の味噌蔵 / 加藤兵太郎商店
日本各地の味噌蔵さまを深堀りしていくMISOTIMES。 今回は「神奈川ブレンド」を製造されている加藤兵太郎商店(神奈川県)の7代目である、加藤篤様にお話を伺いました。  目次 昔ながらの伝統製法×幻の大豆で味噌を開発 システムエンジニアから味噌屋の社長へ 縮小している業界だからこそ挑戦する    昔ながらの伝統製法×幻の大豆で味噌を開発 MISOVATION「加藤兵太郎商店さんの概要について教えてください。」加藤様「加藤兵太郎商店は1850(嘉永3)年に創業。西湘地区唯一の味噌蔵です。厳選した国産原料と箱根山系の地下水を使って、創業当時からほとんど変わらない製法で味噌を作っています。今はステンレスのタンクを使うのが主流なんですが、うちはずっと木樽。手入れにものすごく手間はかかる のですが、加藤兵太郎商店らしい味噌の味を保つには欠かせません。」MISOVATION「昔ながらの製法を今でも大事にされておられるのですね。特に"神奈川ブレンド"はすごい味噌なんですよね?」加藤様「入手が難しく幻の大豆とまで呼ばれる"津久井在来大豆"をはじめとした神奈川県産原料、塩にはミネラル豊富な高級塩"海の精あらしお"を使用したとっても贅沢なお味噌です。実は私が家業を継いでから初めて開発した味噌で、とても思い入れのある味噌なんです。」   システムエンジニアから味噌屋の社長へ MISOVATION「家業を継ぐ前にサラリーマンを経験していたと伺ったのですが、どのようなキャリアを歩まれていたのですか?」加藤様「法政大学の工学科を卒業して、新卒ではシステム会社でシステムエンジニアをやっていました。証券会社向けアプリケーションの開発・保守を担当しており、朝5時に携帯が鳴って始発で会社行く、といったこともありました。大変でしたね。」MISOVATION「かなりハードな仕事ですね(笑)。家業を継ごうという意思はもともとあったのですか?」加藤様「若い頃から結婚願望が強かったので、何十年も赤字が続いている会社を継ぐというのは、将来結婚する家族にも迷惑をかけるのでは?と感じ、実は継ぎたくなかったんです。ただ、奥さんからも継いだら?といってもらえて。また、社会というものを少し把握できたことで自信が持てたことと、価値観の変化から、家業を潰すことが怖くなりました。   伝統を残しつつ今の時代に合った取り組みを MISOVATION「加藤兵太郎商店さんのお味噌はパッケージもおしゃれで新しい見せ方や売り方にチャレンジしている印象なのですが、何か意識されていることはありますか?」 加藤様「今の時代に合わせて"やるべきことをしっかりやる"ということです。例えばSNSを運用したり、見やすいHPを作ったり、いわゆる今時のことを全くやっていない状態でした。パッケージも何十年も変えていなかったんです。味噌は昔からパッケージを変えないのが業界の当たり前。ただし、僕たちは時代の流れと共にパッケージも変えていくべくだと思っています。古臭いイメージを変えないといけない。もちろん、今までやってきたことを変える大変さも感じてきました。ベテラン社員からの反発もありましたし、父親すら敵に感じたこともあります。変えることに否定的な方も多い。その上で突き通してやり切れるか、を7代目として意識してきました。」MISOVATION「伝統を残しつつ、今の時代に沿って変えていく、とても大変なことですよね。とても勉強になりました。ありがとうございました!」
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【MISOTIMES】桜の名所「角館」で生まれた秋田みそ / 安藤醸造
日本各地の味噌蔵さまを深堀りしていくMISOTIMES。 今回は「特上つぶみそ」を製造されている安藤醸造(秋田県)の代表取締役専務 安藤雄介様にお話を伺いました。  目次 角館の歴史とともに発展した味噌蔵 コロナによる損失を新しい取り組みでカバー 縮小している業界だからこそ挑戦する    角館の歴史とともに発展した味噌蔵 MISOVATION「味噌作りのきっかけを教えて下さい。」 安藤様「我々、安藤家は享保の時代から角館に地主として住んでいた歴史があり、その副業として味噌醤油の醸造をはじめました。味噌の仕込み樽に嘉永6年の銘があり、そこから安藤醸造が始まったと言われています。嘉永6年といえば、ちょうどペリー来航の年ですね。」 MISOVATION「約170年もの歴史があるのですね。角館の観光ブームにより影響も大きそうですね。」 安藤様「そうですね。角館はもともと大名"佐竹北家"が治めていた地域でして、城下町として発展してきました。今でも武家屋敷が建ち並んでおり、重要伝統的建造物群保存地区として選定されたことで、観光客も多く訪れるようになりました。弊社のレンガ造りの蔵も東北地方で最古のものであり、仙北市指定有形文化財にも登録されています。平成になってからは秋田新幹線の開業やJR東日本のCMに使用された事なども後押しとなり、東北を代表する一大観光名所になりました。観光客の増加に伴い、直営店舗も運営しています。現在、角館エリアに3店舗あります。」   コロナによる損失を新しい取り組みでカバー MISOVATION「まさに観光需要とともに事業を伸ばしてこられた、ということですね。やはりコロナの影響はありましたか?」 安藤様「観光客が来なくなり、少なからず影響はありましたね。ただ、ECサイトでの販売を強化したり、卸売を強化したことで、損失分をカバーする売上をたてることができました。大打撃というわけではなかったですね。」 MISOVATION「新しい試みによって経営基盤も強化されてきたのですね。」 安藤様「これまでは50〜80代のお客様が多かったのですが、ECサイトを通じて30~40代のお客様にリーチできています。卸売としては関東の明治屋さん等、高級スーパーや百貨店でお取り扱いいただいています。どちらも観光客向けの事業展開に留まっていては開拓できなかった市場だと思います。」   縮小している業界だからこそ挑戦する MISOVATION「新しい取り組みに積極的なところが安藤醸造さんの特徴でもあるなと思います。」 安藤様「高齢化に伴い縮小している業界ですし、今後の成長を考えるとこのままだと厳しいと感じています。私自身、大学卒業後はすぐに家業に戻らず、"らでぃっしゅぼーや"という生鮮ECサイトを運営している会社に入社し、経験を積みました。その時の経験も活きていると思います。次の世代にどうバトンを繋いでいくかを意識しながら、海外進出も含め、とにかく自分がワクワクできることを今後もやっていきたいなと思います。」 MISOVATION「秋田味噌を若い世代、そして世界に届けていく。MISOVATIONとしてもお力添えできればと思います。本日はありがとうございました!」
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