【MISOTIMES】兵士が受け継いだ「種味噌仕込み」製法で作る伝統の味噌 / ヤマニ味噌

【MISOTIMES】兵士が受け継いだ「種味噌仕込み」製法で作る伝統の味噌 / ヤマニ味噌

日本各地の味噌蔵さまを深堀りしていくMISOTIMES。

今日は 「菜の花みそ」を製造されているヤマニ味噌(千葉県佐倉市)の専務取締役 藤川茂様にお話を伺いました。

 目次

味噌産業が盛んだった城下町、戦争で廃業が続いた

現代では珍しい「種味噌仕込み」

味噌は2種類以上を混ぜると美味しい

  

味噌産業が盛んだった城下町、戦争で廃業が続いた

MISOVATION「ヤマニ味噌さんの歴史について教えてください。」

藤川様「元々は麹造りを生業にしていたのですが、初代藤川已之助は"これからは各家庭で味噌を作らない時代がくる"と考え、ここ佐倉の地で明治20年にヤマニ味噌の前身となる"藤川已之助商店"を創業しました。佐倉は武家である堀田家の城下町として栄えたエリアでして、今でも"味噌部屋"という地名が残っています。武士が戦時はもちろん、平時でもいかに貴重な栄養食糧として味噌を考え育てていたかを物語っています。」

MISOVATION「そうすると佐倉は味噌蔵が多いエリアなのですか?」

藤川様「昔は多かったのですが、今は弊社だけになってしまいました。昭和10年代、戦争により味噌製造の継続が出来なくなり、多くの味噌屋が閉店を余儀なくされたそうです。弊社の3代目及び職人達も徴兵により戦地へ赴く事となったため、味噌の製造が極めて困難な状況となりました。しかしヤマニ味噌は佐倉連隊(陸軍)の御用味噌蔵の指定を受け、徴兵により欠けた職人達の役割を佐倉連帯の兵士達が補ってくれました。混迷の時代の中、事業を継続する事ができたんです。」

MISOVATION「歴史的背景もあり、今では佐倉唯一の味噌蔵となったのですね。」

 

現代では珍しい「種味噌仕込み」

MISOVATION「味噌のこだわりについて教えてください。」

藤川様「弊社は1887年の創業以来、木桶仕込み・種味噌仕込みなど、代々受け継がれる伝統製法を守り味噌造りを続けてまいりました。"種味噌仕込み"という製法は、新たに味噌を仕込む際、既に完成している味噌を発酵熟成の種として加えて仕込む方法です。近年のオートメーション化された味噌製造方法では、種味噌の代わりに人工的に培養した酵母菌・乳酸菌を加えます。種味噌仕込みは伝統的な味噌の仕込み方法なのですが、効率的な生産方法ではありませんし、大変手間もかかるため、今日、採用している味噌屋さんは殆どなくなってしまいました。」

MISOVATION「種味噌仕込みははじめて聞きました...!人工的な菌ではなく生味噌の菌を活用する、というのは面白いですね。」

藤川様「そうですね。実は弊社も過去に種味噌仕込みではなく人工的に培養した酵母菌・乳酸菌を使用したことがあるのですが、ヤマニ味噌の味ではなくなってしまったんです。弊社の味を守る上で種味噌仕込みはとても重要だと感じましたね。」

 

味噌は2種類以上を混ぜると美味しい

MISOVATION「今後に向けて何か取り組んでいることはありますか?」

藤川様「どこの味噌屋さんも味噌需要の減少を受け、味噌以外の商品を開発したりと横展開を強化していると思います。弊社は設備がないので味噌しか作れない。だからこそ味噌の奥深さを知ってもらう提案をしたいと思っています。実は、味噌は2種類以上混ぜた方が美味しくなるんです。特に個性が異なるものを混ぜると深みが増します。弊社では個性の異なる味噌を複数製造しているため、混ぜて楽しむ4種の味噌キットのようなものを鎌倉の料理屋さんとコラボして開発中です。各ご家庭の冷蔵庫にある味噌はあっても1-2つですので、味噌のディープな世界を知ってほしいなと思います。」

MISOVATION「確かにこだわりのある飲食店などでも味噌を2種類以上ブレンドしているところは多いですよね。商品化がとても楽しみです。本日はありがとうございました!」

〜〜〜

いかがでしたでしょうか?

これからもMISOVATIONでは日本各地の味噌蔵様の味噌造りに想いやこだわり、魅力などを発信していきます。