【MISOTIMES】戦時中には贅沢品として製造統制。江戸時代から愛された江戸甘味噌 / 日本味噌
日本各地の味噌蔵さまを深堀りしていくMISOTIMES。
今回は「江戸甘味噌」を製造されている日本味噌(神奈川県)の6代目社長 田中様、工場長 天野様、営業部 巴様にお話を伺いました。
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合併を経て関東では数少ない味噌メーカーに
MISOVATION「創業のきっかけやこれまでの歴史について教えてください。」
巴様「1885年に米穀商である"上総屋"が東京の深川で味噌の醸造を始めたのが創業といわれています。大正時代には、全国の味噌業界でも群を抜く生産量を誇っており、1938(昭和13)年には横浜味噌株式会社と合併。一時は、東京や横浜市中区山下町などに3工場を持っていましたが、1964(昭和39)年に現在の工場がある横浜市神奈川区三枚町に新しい発酵技術を取り入れた全行程機械化の近代工場を作って工場を一本化しました。」
MISOVATION「社長はもともと他の食品メーカー出身とお聞きしました。」
田中様「そうですね。大学卒業後はキューピーに就職し、営業・工場・総務など幅広く経験しました。その後、父の体調が悪くなったこともあり20代後半の頃に家業に戻りました。それから30年以上、社長なってからはもう20年以上経ちますね。」
八丁味噌のうま味+京都白みその上品さ
MISOVATION「江戸甘味噌について教えてください。」
田中様「江戸甘味噌は、八丁味噌のうま味と、京都の白みその上品さを兼ね備えたものとして、江戸中期に開発された江戸特産の味噌です。現代では信州味噌が一般的ですが、江戸時代では江戸甘味噌が多くの方に親しまれていました。茶褐色で、大豆の香味とこうじの甘みが調和し、とろりとした風味があります。特徴として大豆に対して1.5倍もの米麹を贅沢に使用することで、コクと甘味が強く感じられる味わいになっています。米の使用量が多いことから、戦時中には贅沢品として製造統制を受けました。戦後は物資不足もあって製造する会社がなくなっていく中、江戸甘味噌の製造元は当社を含む3社のみになりました。」
MISOVATION「昔は一般的だった江戸甘味噌ですが、なぜ消費が減っていったのでしょうか。」
田中様「やはり、戦時中の製造統制が大きいですね。昭和26年に統制解除されましたが、この空白の10年で食生活が激しく変化し、嗜好の移り変わりも影響しています。
MISOVATION「10年間は大きいですよね。味噌の多様性を守る上で、様々な味噌の味に親しんでもらう、ということが重要だなと感じました。」
他社と競合しない市場で伝統を継いでいく
MISOVATION「江戸甘味噌の主な販路について教えてください。」
田中様「当社の販路は業務用がメインです。昔は街や商店街の酒屋さんなど味噌の量り売りをしているお店へ卸していましたが、関東大震災や大手スーパーの登場に伴い、徐々に業務用にシフトしていきました。江戸甘味噌という歴史と特徴のある味噌だからこそ、他社と差別化できるような味噌の原料を探していたり、料理と相性の良い味噌を探しているケースで当社の味噌が活躍しています。特に魚や肉との相性が良く、米こうじに含まれる酵素がたんぱく質を分解してうま味を出し、魚や肉の臭みを抑える働きがあります。現在は老舗の料亭や料理店、コンビニや食品メーカーをはじめとするベンダーさんなど、取引先は多岐に渡ります。今後も他社と競合しないマーケットで、自分達の強みに特化した戦い方をしていきたいと思います。」
MISOVATION「貴重なお話をありがとうございました。」
いかがでしたでしょうか?
これからもMISOVATIONでは日本各地の味噌蔵様の味噌造りにかける想いやこだわり、魅力などを発信していきます。